チャレンジ四国DAY2

目覚めると朝ごはんもそこそこに足摺岬を目指す。なんといっても今日中に東京まで戻らなければならないのだ。そしてここは四国で最も東京から遠い場所。飯なんて食ってる暇はないというものだ。足摺岬への道はかなり険しいワインディングロードだ。道幅も狭い。バイクなら大丈夫かというと隼はあまり細いブラインドのコーナーは苦手なのだ。もとい俺が苦手なだけだが。
足摺岬には遍路の寺院がありそのため観光客でごった返していた。みやげ物やもたちならび、ザ・観光地という感じだった。岬の景色は確かにいいが荒天に対応した重装備のライダーとよろよろあるくおばあちゃんたちの群れというのはなんともミスマッチな感じがする。旅人の来る場所ではないのかなと思う。しかしミッションとしては1ポイントクリアだ。そそくさと岬を後にすると一路高速へ。途中窪川の道の駅で朝ごはん。おにぎりセットはおにぎりとカプチーノカップに(!)味噌汁がほんのちょびっと入っている。それにつけものと玉子焼きが2切れ、バナナとオレンジが一切れ、これに飲み物がついて500円という、なんだそりゃ的メニュー。外の屋台で窪川ポークの串焼きを300円で追加で食べたがこれ、これがあのメインディッシュにほしかったんだよ。
高速に乗ると高知は通過することにした。高知市街にいい店があるという情報を得ていただけに後ろ髪を引かれる思いだったが、大丈夫、またくればいいんだよということで。高知を後にすると高速は険しい山間部に入る。かなりの高所に橋がかけられているようで谷を吹き抜ける風が厳しい。そして雨が降り出す。準備したレッグカバーとタンクバックにカバーをかける。ここでおっちゃんに話かけられる。これなんCCなの、リミッターついているの、と。1300ccでリミッターは300kmで作動するはずですと堪えると、驚きの表情。まあ、そうなんだろうな。隼で旅していると一般人から話しかけられることがかなりある。自転車でツーリング中にも声をかけられることはあるが、隼はずばぬけている。駐輪場にとめるとかなり注目を集めているのがわかる(もちろんバイクが、だ。)赤黒の目をさすカラーリングにシルバーの隼のロゴが輝くその姿はまあ確かに見惚れるのはわかる。が。そんなに話かけるもんなのかなぁ。俺がクルマで旅していることはそういうことはしなかったものだが。
その先高速の分岐で鳴門方面こちらと書いてあるほうに言ったつもりだが徳島道に。ひょっとしたらつながってるのかなというかすかな期待はあったが結局徳島のひとつ手前で高速を降り、高松道に入りなおすことに。これで1000円余分にかかるんですけど。確かに通常利用の場合高速料金的には一度降りても変らないわけだしあの標識は間違ってはいないのだろう。いないのだろうが。

ええかげんにせえよ

ちょっと機嫌をそこねかけたがまだまだ先は長い。淡路島大橋の手前で神戸市街を眺める日曜の優雅な昼下がり。丘までびっしりと住宅が立ち並ぶ白い街並み。神戸にいては神戸のこの景色はみることができないのだ。神戸を楽しむなら淡路に来るべしと。東京まで帰られなくてよいならばこれほど気持ちの良い午後3時はないだろう。しかし疲れた体と隼にむちうって橋を渡る。瀬戸大橋とは打って変わって風はほとんどなし。その先山陽道経由で渋滞にはまりつつ行きと同じ西宮で給油する。この時にかなり風が強くふているのを感じていた。そのまま吹田から名阪、新名神、と来て途中の渋滞もやりすごし魔の伊勢湾岸道でそれは起こった。

四日市JCTを過ぎるとバリアに沿って走っていても切れ目から突風が吹きつけるのを感じていた。嫌な予感がしてあたりを見回すと工場の煙突の煙が真横に流れている。強風の証拠だ。しかし高速に入ってしまったらもう引き返せない。橋のピークが高度のピークで、これが風のピークだ。右から左から吹き上げる風にまさに翻弄される。カウルに伏せて対応するが限度を越えている。何本目からの橋の上でついに突風がピークに達し持ちこたえられずに3車線の一番左から一個右へ車線変更する。次に右からの突風で右から左へ1車線分ながされる。また一番左だ。後1車線飛ばされたら欄干とクラッシュしてツーリングは終わり。まさに生命の危機だ。
整理すると、一方向から風が吹いている時に何もしなければ反対方向に吹き飛ばされる。3m飛ばされればもうそこは欄干、クラッシュすれば橋下へ落下となる。そしてなぜか欄干が低いのだ。バイクの腰ほどの高さしかない。一方で吹き飛ばされないように風の吹いてくる方向に体重をかければかけた力の分だけ吹き飛ばされる距離を短くすることができる。しかし。突風のようにいつなくなるかわからない風に対してそういう対応を行うとどういうことになるか。突風の場合には風がなくなった瞬間に反対側からの吹き返しがあるため、体重をかけた側の支えがなくなり、反対側から押されることになる。信じがたいことだが直線を走行中であっても転倒する可能性もある。振り落とされまいと両手に渾身の力を込めてバイクにしがみつく。必死だ。しかし無情にも橋はつづく。いくつめかの橋でいよいよ雨が振り出す。頼みの綱のグリップが失われるのは時間の問題だ。何の比喩でもなく泣きそうになってくる。が、泣いている余裕などない。バイクを直立に保ちながらできるだけ早く橋から抜けなければならない。なんとか無事橋を抜けることができると恐怖のために手と足ががくがく震えているのがわかる。助かったという気持ちでいっぱいになる。

風は特に問題なくなったがさすがに疲労がたまったので刈谷SAに入るとなんとバイクが何台かいた。しかしみな命からがら逃げ帰ったという風ではない。なれているのか、それとも(隼に比べれば)突風に強いバイクなのか(それはないと思うが)わからないが、とても聞く気にはなれなかった。ここでどて丼を食べて最後の補給にする。ちなみに給油はもう一回必要だろうが名古屋ですると早すぎるので先にとっておくことにする。豊田東JCTはやはり渋滞。いつも渋滞だなここ。その先も断続的に50kmほど渋滞していた。自分にとっては0kmの渋滞ももちろん渋滞なのだが、これは回避できる。しかし40-50で動かれると危なくて対応できない。70くらいが一番危険で多少自由になる空間があると意味のない車線変更や割り込みをする車が多いのだ。それをやってもリスクだけで得るものは少ないはずなのになあ。

結局掛川袋井で雨が降り出し、寒さでペースがあげられない。なんというか、すごい修行だな、と思う。足柄で休憩したときには立ち止まっていてすら震えるほど寒く、そんな中を走るわけだからその過酷さは想像を絶するものがある。救いなのは大井松田からの渋滞は解消していたがとても素直にそんなことを喜べる心境ではなかった。

厚木で流出、料金表示は1850.徳島からの料金だ。ただし淡路島大橋は別。行きが御殿場から大洲まで1850+1000(瀬戸大橋)、帰りが高知から徳島の1000+徳島から厚木の1850そして淡路島大橋の1000で合計6700円。まあ、手違いがあったので本来は5700円だが、どうだろう。あまり安くないと感じるのではないだろうか。大橋の走行料がなかったと仮定すると3700円、ここまできてようやく安いなという感覚になる。合計2200km以上のグランドツーリングなんだから、まあ、しかたないのかな。
結局自宅は2352着。ちょうどF1オーストラリアGPが始まるところだった。just in time.それにしても疲れた。